ヒロポン大好き


起床時間を記入したあと、やることもないので布団にもぐっていた。
ほとんど眠らなかったが、短時間だけ眠っていたようだった。
 
目が醒めると、うつ伏せで両腕をだらりと前に伸ばした姿勢になっていた。右手には何か持っている。薄暗い部屋の中で、手に持っているものの感触を確かめる。
──注射器だった。右腕をそのままに、左手で注射器を確認していく。先端部、針は露出していた。つまり使用済みということだ。俺は無意識のうちにヒロポンを打っていたらしいと分かると、恐怖がこみあげてきた。一歩間違えば血管に気泡が入る可能性だってあるし、そもそも正確な位置に注射できたのか。右手の注射器を手放したいのに、注射器は離れてくれない。ようやくして注射器を放り出したあと、次に気になったのは体調のことだ。無意識にヒロポンに手を出したのだ。相当ひどい状態だったんじゃないか。が、目覚めてから今まで、うつ伏せのまま横たわっていたせいか、体調に異変は感じなかった。とりあえず、起きてみようと身体をずらした。
 
というところで再度目が醒めて。注射器を探してもどこにもなく、冷静に考えればヒロポンは処方されていないので、夢だったと気付く。