戦略

山岡荘八『小説 太平洋戦争』では、第二艦隊の沖縄水上特攻に関して、「あれは大和を沈めるための作戦」だったと書いてある。「大和があれば本土決戦が出来る」と主張する意見が消えないから、それを消すためだと。確かにそう考えれば、納得の行く部分が多い。自分はその考えが事実に近いのではないかと考える。

また、困難な状況に追い込まれても戦い続けた部隊の記録もあり、特攻隊で散華された方々の純粋な思いが綴られたものもある。

そういう事実を否定するつもりはない。が、彼らをそのような状況に追い込んだのは一体何なのか、ということについては憤りを感じずにはいられない。

単純にいえば国家戦略の欠如であろう。世界の中での日本がどうあるべきかが規定され、それに沿って法律が整備され、組織が成立し、目的達成のために動き出す。それがあるべき姿なのではないか。帝国陸海軍がまっとうな戦略を持ち合わせていれば、末端の部隊が無駄にすりつぶされることはなかったはずだ。

戦略があれば失わなくてもいいものを、日本は多数失ってきた。いまも失っているかもしれない。
政府、省庁の不祥事や迷走、企業、個人のそれを見るにつけ、いまだ斯くあるべきという戦略は無いのだな、と自省をこめて思うのである。