エリヌス―戒厳令

谷甲州の航空宇宙軍シリーズのひとつ。
ここ数日、就寝前に読んでて読了。


何度も読んだ話だし、かなり昔の話なのであるが、なんというかこの頃から安定した文体なのだなあ、と感じる。宇宙それも天王星系の情景描写あたりは秀逸。天王星の衛星エリヌスの地表から眺める光景など、この当時はデータから想像するしかなかったろうに。(いまでは、プログラムで既知の任意の場所から他の天体がどう見えるかをシミュレート出来る)
あとはこう、雑然とした街並みであったり、老朽化した宇宙船だったり、そういう「くたびれたもの」に臨場感を与える描写が上手い。
昔読んでいた頃は、話の流れを追うほうに必死になっていて、それらの細かい部分まで目がいかなかったのだが、時間をあけて読み直すと、描写の細やかさに気づくことが出来た。


自分の記憶力の悪さはともかくとして、読みなおすたびに新しい発見があるのが名文の条件のひとつと考えるようになったのは、谷甲州の著作のせいではないかと、思うのである。