幻聴も久しぶりのような気がするが前がいつだったか覚えていない

「ところでさ」
前ふりもなくこいつは語りだした。
「あんたが私の前でもそもそ食ってるそれは何?」
見てわからんか。晩飯だが。
「っていうかうまい棒じゃない。それを晩飯というのはどうかと思うのよね」
「どうかと思われても主観的にも時間的にも夕食というべきものだ」
「はぁ」
パソコンがため息をつくのもどうかと思う。
「一食10円で済まさなければならないほど追い詰められていないでしょ?」
値段の問題ではない。たんに食欲がないだけだ。食欲が落ちているときに無理して食べると消化が悪い。
「だからそれが、ああ、もう!」
何故だが知らないがこいつは機嫌が悪そうだ。食べカスとかが気になるのだろうか。もう食べ終わったが。
すると、今度は声のトーンを落として訊いてきた。
「そんなのばかりで飽きない?」
何種類か味があるからな。ローテーションさせれば飽きることはないぞ。
「バカ! もう知らない!」
今度はいきなり怒り出す。感情の豊かな奴だな。
「今度の週末は秋葉原行くからね! バッテリ買うから、連れて行くのよ! そして帰りにでも肉をモリモリ食べるの!」
ちょっと待て。なんで食事の内容まで決められなければならん。お前が食うわけではなかろう。
「いいから! もう決定! 意見があるなら60日以内に担当窓口に書面で提出のこと。一年くらいしたら誰か読んでくれるかもしれないわ」
パラノイアかよ。ところで。
「今度の週末は仕事っぽいんだが」
ぷちん、と何かが切れる音が聞こえた気が、した。