海辺の小さな町

海辺の小さな町 著者は宮城谷昌光
美しい日本語を使う人だと教えてもらって読んで以来、その美文に魅了されている。
数行、数ページを読むだけで、その美しさに感動する。
というか、あまりにも美しくて、決して到達できない領域にある文章だと認識して落ち込んでしまうこともある。

文章を書くひとはみな、大なり小なり誰かの著書の影響を受けていると思う。
自分の場合は谷甲州である。あの硬質で泥臭く不要なことを語らない文章を意識してしまう。技術的には、十年二十年と訓練をすれば、技術的な面ではその模倣の段階まで到達できるような気がする。

が、宮城谷昌光には、努力や訓練だけでは到達できない「美しさ」がある。おそらく、真似をしようとしても無駄だろう。
けれども、日本語はこれほどまでに美しい表現を出来るのだと理解することは出来る。感性の豊かな時期に接することが出来ていたら、ものすごく幸福なことではないか。
もし中学や高校時代に宮城谷昌光に接していたら。
今とは違った人間になっていたことは間違いない。