帰路

だいぶ移動してきたので、来るときとは違う道となる。幸い、海から戻ろうとする車が何台かあり、その方向に進めば大きな道に出るだろうと思って後続する。
少し不安だったが、大きな道に出ることは出来た。ただ、問題がひとつ。駅はどっちだ。
判断材料はまったくないので、二択で適当な方向にあると仮定して歩き出す。
やがて捨てられたバス停を見つけ、駅に向かうのがこの方向で正しいことを確信する。
何事でもそうだが、これでいいという確信は心を軽くしてくれる。だから、足を動かしながら、海から受けた印象を言語化する行為に集中した。

駅にたどり着き、電車に揺られながらも、それは続けた。

もし今日がひどく寒く、波が高い、冬らしい海であったら、その荒々しさに屈せられてこうしたことには気づかなかったかもしれない。
もし今日が夏の海であったならば、砂浜なんぞに捉われることなく、海に足をつけて別のものを感じていたかもしれない。
そう考えてみると、今日はものすごく良い経験をしたと思う。