本屋が潰れた

昨日の出来事だった。古びた町の本屋さんという感じの店が駅前にあったのだが、出かけに通りがあると突如「突然ですが、閉店します」という張り紙を出してシャッターを閉めていた。そこに入ったことはないので「へー」と思っただけだが、帰路にまたそこを通ると、店主夫妻なのか中高年の男女二人が店から店前に停めてある軽トラックに荷物を運んでいた。ちらりと店の中をうかがったが、本はすべて運び出されており、空っぽの本棚だけが残されていた。
ま、潰れるのも時間の問題だとは思っていたが。
 
道路を挟んで反対側にコンビニがあるから。
駅前ということで、学生が多い。
駅から高校直通のバスも出ているし、それ以外にも駅利用者は多いだろう。それを見込んで昔本屋を開いた。売れ筋は週刊雑誌とコミック、せいぜいライトノベルか。だが、寡占状態は長く続かず、コンビニが出店した。コンビニが雑誌類を取扱い、コミックを置くようになってからは、売上は減少の一途だっただろう。ちょっと腹が空いた。何か買うか。ついでに週刊雑誌も。同じ店で全て出来るのなら、わざわざ雑誌のために本屋にいく理由もあるまい。
雑誌にしろ本にしろ再販制度のおかげで売値は同じ。コンビニでも本屋でも変わらない。ならば手軽なほうで購入するだろう。もっとも、再販制度がなく価格を自由に決められるとしても、個人商店であれば値下げに限界はある。値下げ競争をしていたら、潰れるのが早まっただけだったろう。
別にコンビニを悪者にするつもりはない。ネットで本が購入できるようになって、しかも送料無料となれば、わざわざ書店に取り寄せを依頼する人も減ってきていただろう。
まあ、言ってしまえば時代に潰された本屋ということになろうか。
 
興味があるとすれば、今後その店舗跡には何の店が入るのかという点だ。駅前で立地条件も悪くない。少々狭いが、業種によっては問題はないだろう。だが、最近あちこちで店が消えていき、貸店舗の看板が長らく風に揺られている現状では、ここもそうした廃墟の一つになるのかと思わないでもない。